創作文芸サークルであるクロヒス諸房のコミケ85新刊である「おとどけ! ピザバッツ」を読みました。このまえの文芸カレーのときに買った奴ですね。
 作者のトオノキョウジさんの得意な間合いである中短編で、ネタが煮込まれたシチューのような、濃厚な作品となっている。
 SNSなどが急速に発達している昨今、経営者が危惧する(いわゆる)バカッターテロに対する、内閣府許諾による宅配飲食業者を中心とした、カウンターテロ部隊の話。
 宅配ピザ屋のピザバッツ、そこの首領(の奥さん)である女傑、ケイコ。ピザ生地をのばす太く分厚く大雑把な、大木のような麺棒を武器に、新ゆとり世代の巻き起こすバカッターテロと戦うおばちゃんである。
 彼女は相棒の一翔(イッショー)と共に並み居る馬鹿共を力でねじ伏せ、テロによって貶められる危険から企業の名声を守っている。
 そんなカウンターテロ部隊「デリバリーガード」の強引な手口に抗議の運動まで起きる中、コンビニエンスストア主体のカウンターテロ部隊も立ち上げられる。
 しかし、このコンビニエンスストア「ヘブンドリヴン」は、バカッターテロを引き起こし、自社で解決し荒稼ぎする悪徳企業であった!
 そこで巻き起こるテロと、デリバリーガードたるケイコらピザバッツの戦い。
 その中で明らかになる陰謀。
 ヘブンドリヴンとピザバッツの戦いの果てに、彼らは何を見るのか。
 ネタの密度はかなりのもので、最初から最後まで独特な展開ですすみます。
 多少ネタ先行で話の展開に間延びする場面が少しあるが、テンポは良く、ストンストンとイベントがおこる。キャラの掘り下げに関してもイッショーの視点が「どう変わっていくか」が話そのものの主題なのでブレがない。ただ、序盤にそこが主題であると臭わせるも、そこが主題であることが半ばまで読んでからはっきりするのが少しもどかしかった。
 文章そのものの運び方は少し重いが、入り込んだら最後まで一気に行っちゃう上手さがある。
さあ、夏コミや文芸イベントでクロヒス諸房をチェックだ!
