「いやあ、三題噺ってあるじゃないっすか」
「あるねえ。昔良くやったよ、作品構成の練習になるんだよね」
「今もやってます? とあるワークショップでは良くやってるって話ですが」
「ワークショップ? 小説の?」
「ラノベ専攻の学生が受けてるんですけどね」
なんて会話が。
お題3つ。たとえば「神社」「流出」「バット」(本日のヤフーニュースの3つから抜粋)があったとして、そのワードを物語に盛り込んで話を作るわけですよ。
【仮に組まれた企画】
神社のご神体であるバットが外部に流出してしまい、神主または巫女の主人公がそれを取り戻す掌編なり短編(のような感じ)。
1週間かけてその三題噺を学生に書かせて、さらに講師はもう一個のキーワードを追加するように言うらしい。たとえば「入学式」とか。
そうなると、たとえばこんな感じに変わるらしい。
【仮に組まれた企画2】
神社のご神体であるバットが外部に流出してしまい、高校の入学式を終えたばかりの神主または巫女の主人公がそれを取り戻す掌編なり短編(のような感じ)。
なるほど、これは三題噺のワードが変わるたびに色々頭を捻らねばならない。
自分もこんな感じでけっこう頑張ったのを思い出す。
しかし、このワードを変えて貰うたび、追加されるたびに、いろいろと設定やら登場人物や諸々を考える必要があって、実に頭を使う。
――というのが、文芸的な話の組み方だな、というのが最近とみに感じる部分。
ここで拙作「それいけ三蔵法師」に当てはめるとどうなるか。設定などどうとでもなる、おそらく拙作でいちばん極端にキャラクター小説してる作品なので、そこに当てはめると……。
【キャラクター小説的組み方】
三蔵法師の一行は西にあるという神社に、流出した『ありがたいお経』が納められているという噂を聞き、妖怪バットの領地へと向かう。
ここで「入学式」が加わっても――。
【キャラクター小説的組み方+α】
三蔵法師の一行は西にあるという神社に、流出した『ありがたいお経』が納められているという噂を聞き、妖怪バットの領地へと向かう。はたして妖怪バットの秘術「入学式」とは何か。
と、こうできる。
お題が「離婚」「追悼」「試合」+「味噌煮込みうどん」だとしても――。
【それいけ三蔵法師 第X話】
三蔵法師の一行は西にあるという、とある町で先代領主の追悼として行われる味噌煮込みうどんの早食い試合の賞品として「ありがたいお経」が出品されるとの噂を聞き、妖怪の罠とも知らずに一行はその町へと向かう。はたして妖術「離婚」とは何か。
と、こうなる。
他にワードが追加されたら妖怪の名前とか妖術の名前にしてやれば良い。
「なんで神社にお経?」とか「西遊記って中国じゃないの?」とか、そういうくだらないツッコミすら発生しないのがキャラクター小説の良いところだなあと。極端な例だけどね。どんなものもキャラに当てはめたればええねん、設定なんぞどうとでもなるわい、という。
このあたりのさじ加減を「文芸寄り」にするか「キャラクター小説寄り」にするか、ですな。
少年漫画、コロコロやボンボン時代のギャグマンガとか、ストーリーって覚えてないんすよね。どんなキャラがいて、どんな反応をしたのか、どんなことが出来たのかくらいしか。漫画的な構成って、たぶんそんな感じ。
キャラクターのひしめく池にどんなワードという小石を落として波紋を楽しむか。
波紋ありきで小石とキャラクターを配置するか。
どんな作り方で自分は話を作るのか、読者が求めているのはどのあたりの塩梅か、またどのあたりを視野に入れて作品を書いているのか、自分の行動に関して「こうだよ」と言えるようになるのがまずは大事な足下確認なのではないかと自戒。
頑張ろう、うん。