●三日月理音さんの『猟犬の残効』を読んだ

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rz.JPG 『BAR 道化倶楽部』の三日月さんが、この秋の文学フリマで発表した作品、『猟犬の残効』を読んだ。
 以前の「プロット研究会」において、今回の作品の骨となったプロットを見せていただいたことは今でも覚えています。主人公と少女が、ひとつの『悪』という事件や事象を、それぞれの目で捉え、理解し、対抗していく過程がすごく面白いと思った。ひとつな大きな事件を追う、細かい事件の幾つかで構成されるオムニバスといった風だった。
 主人公の目的と、少女の目的がはっきりとしていて、投げ込まれる事件に対する反応がどういったものになるか、興味が惹かれる構成だった。
 さて、どんな完成作品になっているのだろうか、楽しみだった。

 で、届いた! 『猟犬の残効』!
 以下、紹介。

内容:2022年、ニューヨーク。フリージャーナリストのダイアン・デイが元夫・ギルバートとともに
とある集団失踪事件に遭遇する。
一切が不明のなか、ダイアン、ギルバート、養女・ジャンナの過去が浮き彫りになり、
錯綜する事件は三人の手を離れて行ってしまう……
ハードボイルドサスペンスです。

(ブログの紹介文より)

 文量は中編一本分。
 ……はたして詰め込みすぎになっていないだろうか。
 心配は杞憂だった。

 主人公のジャーナリストであるダイアン(読めばすぐに女性と解るが、読むと「女性か?」ってくらいパワフルなおばさん)が、ちいさなふたつの事件と、大きなひとつの混乱の中で、「おいおい、有象無象の輩たち、これは私の追う事件だ。獲物を巻き上げるんじゃない」と、巨大ないっこの陰謀を暴いてしまうお話。
 共にいる少女ジャンナは、ダイアンの人としての弱さを。
 元夫のギルバートは、ダイアンの女性としての弱さを上手く出している。
 基本的に強いんだこの女。この二人がいないと弱くならないw

 語り口は淡々としていて、進む時間と事件は読者を待たずに進んでゆく。
 この短い中編で長編の話(の文量は必要だと思われるネタ)をと、少し不安だったが、このまとめ方は上手いと思った。すんなりと事件が追える。

 ブログを見ると、この作品を書き終えたら休筆するとあるが、この物語の作者がそんな簡単に筆を休めるはずはなく、二週間くらい休んだり、身のまわりが落ち着いたら、案の定、新作の話をし始めている。

 もし皆が興味を持ったら、ダイアン以上にパワフルな三日月さんの本を手に取ってみたらいかがだろう。
 文学フリマなど、創作イベントに参加していますよ。詳しくはブログをチェック!

 


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